映画「怪物はささやく」の感想 勝利くんが演じる13歳コナーが抱える人間の矛盾

勝利くんが2月10日(土)から舞台にたつ、「モンスターコールズ」の映画版を見ました!

原作小説も先ほどアマゾンで届いたばかりなので、公演を見に行く日までに予習したいと思います。Xで想像力を要するお話だから原作や映画を見ておくとよいかも、というツイートを見たので、まずは映画からさくっと見ました。

まず映像がとても美しかったです。怪物がコナーに話す3つの物語のシーン、水墨画というか水彩画というかとても芸術的でした。あれはデジタルでつくるの大変ですよね…?デジタル作品なのに、リアルな絵を描いている実際のシーンを見ているようで目が引き込まれました。そしてそれとは対照的な、家を根こそぎ引っこ抜いたり、家中のものを破壊しまくったりという暴力的な場面がよりよく映えて、映画として見ていて飽きなかった。

怪物が話した物語は、以下三つ。

・人殺しの王子は国民に愛された

・調合師は嫌な奴だが正しい

・透明人間は注目されより孤独に

どれも矛盾だらけで、ファンタジーの中で語られる話としては腹落ちが悪く、すっきりとしない。けれど怪物が「真実とはこういうものだ」と語るところが、大人になって逆にすんなり理解できるところでもありました。正直すぎてまっすぐな私は、「なんでこんな矛盾がまかり通っているんだろう?」と思うことももちろんあったけれど、でも「世の中こういうもの」ということも現実で理解してきて、辛くなることもありました。

怪物が「人間は都合のよい真実を信じる。真実のつらさを和らげるために」というのも、最近のネットニュースのあれこれ見ていたらその通りだよなあ。ネットニュースなんかは真実のつらさどうこうではなくて面白おかしく書いて閲覧数稼いでるだけなんだけれど。「人間は都合のよい真実を信じる」ということは、覚えておきたいなあ。経験談。

コナーが事ある度に「罰にあわなくていいの?」と聞いていたこと、最初は子どもだとやっぱりそう考えちゃうのかな?くらいに軽く見ていたのですが、自分で自分を罰することで安定を保っていたんだなと気づくと、とても奥深いです。いじめにあうのも、本当は嫌なんだけれど自分への罰の役割も果たしていた。それは母親を愛しているのに、母親の手を離して(=母親を亡くして)もう終わらせたかった、という矛盾を抱えていたから。コナー自身が矛盾の中にいて、無意識に罰を受けなくてはいけない、と考えていたんだろうな。

最後にこの怪物のお話はコナーの母親が作ったもので、母親の物語。怪物がコナーを救いたかった、というのは、きっと母親もコナーの苦しみを知っていて、母親こそコナーを救いたかったんでしょう。だからコナーが母親の手を離したことを責めたりはしないだろうし、「(話もできないほど怒ったことを後悔しても)気に病んじゃだめよ」の彼女の言葉が思い出されて、視聴者として安心できるなと思いました。

怪物はおじいちゃん!というネタバレを見て、さらにこの映画すげえ…となっています。最初の映像機を出しながらおじいちゃんの話をするのも、祖母が用意してくれたコナーの部屋に幼少期時代の母親がその父親(=コナーの祖母)に抱きかかえられた写真を写すのも、ちゃんと意味があった…!さらに怪物の声が写真に写る俳優と同じらしいので、答え合わせです。これはすごい。

勝利くん、これを演じるのか…。13歳の役を演じるだけでもびっくり(といいながら永遠の10代でいけますうちの佐藤勝利、って思ってるオタク。というか佐藤勝利様以外にできる人いないよね、あの美貌で…)なんだけど、この怒りや寂しさ、悲しさ、孤独、と同時に母親への愛、なにより多くの矛盾を抱えた13歳の役って、相当メンタル削られるし、普通に役者として人並じゃない。勝利くん、舞台が発表された日の誕生日ブログで「これは僕の物語です」って言ってたんだけれど、勝利くんも壮絶な10代を送ってきたものね…。映画のコナー役の子も、とても素晴らしい演技でした。勝利くんがんばれ~~~~✨

Today’s English!

  • Blood stream

血流。コナーが母親の病気は治る!って維持張ってたところ。字幕で血管が~とか出てたから血管かと思ったけれどstreamは流れのことだから血流ですね。血管はblood vesselだ!

  • She is entitled to have her own opinion.

父親とコナーが車の中で話すシーン。コナーの祖母が彼をよく思っていないことをコナーに指摘され、「意見を持つのは自由だ」と言っていました。~する権利がある、ってことだけれど、こういう場面で使えるのか!と脱帽でした。脱線するけど、パパが迎えに来て遊園地に行くところ、コナーがドアを開けて「パァ…!👀✨」と目を輝かせていたのすごく印象的だった!

  • What could possibly be the point?

罰にあわなくていいの?とコナーが聞いて、祖母も、父親もこう答えていました。What’s the point?と聞くことはよくあるんだけれど、それのより「そんなことして意味あるの?」と感が強いです。

  •  Natural fit

コナーと祖母は「気が合わな」くて、”We’re not the most natural fit, aren’t we?”と祖母が尋ね、でもお互いの共通点はママだよ、って確認する。泣けた…。お互い気が合わないことはわかっているけれど、一緒に生活していかないといけないし、それでも母親が二人をつなげてくれるんですよね。シーンとしてもとても泣けたのですが、この表現は今回の映画ですごい収穫…‼気があう、って日本語でよく言うけど、英語では自然にフィットする、ってことなんですね。

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